民間児童養護施設の世襲制について

全て、とは言わないが、民間施設(社会福祉法人立の施設)では
園長の息子や妻や弟・・・という、いわゆる「身内」が次期園長となるケースが多い。
私が勤務していた施設でもそうだ。
ある時
他の施設で長いこと児童指導員として勤務し、園長になったこともある人が
次期園長候補になったことがある。
殆ど決まりかけていた時に、初代園長夫人から
猛烈な反対があり、その話は白紙に戻ったと聞いた。

私の元職場では、私の勤めた施設だけでなく
同じ法人内の他の施設もみな、こうした世襲制がとられていて、
創設者の家系図と法人の組織が一致しているといっても過言ではないような状況だった。

こうした世襲制について、当事者達は
「創設者の理念を継承し、一貫性のあるサービスを提供できる」と言っていたけれど、
結局は、(身内でない職員としては)「身内vs外様」みたいな感じはぬぐえない。
そのために有能な職員が辞めてしまうことだってあったわけだし・・・

なぜ、施設運営者は自分の身内に後を継がせるのだろう。
こうした現象を、私は、
日本の社会福祉事業に対する国の施策の貧困さによる副産物と考える。

特に戦前から行われている民間団体や個人による社会事業は、
篤志家と呼ばれる人達の、個人的な資産に頼って運営されてきた。
社会の片隅に追いやられていた人々や子ども達に対して
止むに止まれぬ思いや、宗教的倫理観から、
私財を投じて始められ、施設の開設から運営の全てに至るまで、
国の援助は殆どあてに出来ない状況の中で長年活動が続けられた。

戦後児童福祉法が施行され、児童養護施設の運営に措置費が投じられるようになっても、
子ども達の生活をまかなうのには不十分な状況が続いた。
豊かな食卓を囲むため、子ども達に多くの生活体験をさせるため、
義務教育以上の教育を受けさせるために、
民間施設では個人的な資産をつぎ込まなければならない状況が続いていた。
少しでも豊かなケアを提供しようとすればするほど、そうならざるを得ない状況だった。

私は、自分が就職した後も、初代園長夫人から、
「子ども達の布団を買うために私のピアノを売った」とか
「子ども達を海に連れて行くためにどこそこの土地を手放した」とか
といったような話をずいぶん聞かされた。
子どものために止むに止まれぬ思いで、長年に渡って私財を投じ、そして今日の施設がある。
社会福祉法人となった今では、施設の財産は個人には帰さない。
だから、創設者の一家が、直系の親族でそのTOPを守ろうとする気持ちもわからなくはない。

しかし、後を継ぐ息子や弟や妻達が
児童養護の実践者として、また施設の運営者として適任であるかは、厳しく審査されていない。
そこに大きな問題があると思う。

児童養護施設は「児童指導員」の資格があれば、有資格者として勤務できる。
この「児童指導員」は、教員免許を持っているか、
大学で社会学・教育学・心理学などを専攻すれば卒業と同時に取得できるので、
必ずしも児童福祉や保育の専門を学ばなくても良いのだ。
あるいは、大学卒業後2年間現場で勤務すればなれる。
つまり、自分の親が運営する施設で働いていれば、そのまま有資格職員になれるわけだ。
(実際私の元職場の2代目・3代目・4代目の園長は、社会福祉を専門に学んだ人達ではない)

「児童養護」という大切な仕事をする現場で必要な資格が
このように曖昧であること自体に大きな問題があるし、
施設内の人事が「治外法権」のようになっていることも問題だろう。
優れた園長の身内であることがイコール優れた後継者ではないはずだ。
少なくとも次期園長の選出に当たっては、
行政機関がそれを適切に審査するだけの権限が欲しいと思う。
各自治体の「児童福祉審議会」にそのような部門を設けるなどして、
施設の運営を各法人任せにせず、公的機関としての適性を問うことをして欲しい。
少なくとも、施設の運営に対して「措置費」が支弁されている以上は。


転載元:ウサギのひとりごと

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